RAMEN DIARY

究極の個人店

Ramen Crazy

「麺少なめできますか?」

できない。

「ネギ抜きで」

帰れ。

というラーメン屋の世界は、本当に楽しいはずだ。

この仮説をもとに、架空のラーメン店の設定を考えている。考えていると、楽しくてたまらない。

まず、この店にはドレスコードがある。

黒Tシャツ、黒いパンツ。

客は全員、この格好で来なければならない。メニューは一品のみ。麺の量も、具も、店主が決める。客の要望は一切認められない。

席は20席。20人が揃うと、店主は20杯を一気に作る。

同じ格好をした20人の前に、同じラーメンが並ぶ。そして全員が、その一回の入れ替えに間に合うように食べる。

早く食べ終えるぶんには構わない。ただし、遅れると、その日の店主の機嫌によっては叩き出される。

何分までなら大丈夫なのか。

そんなものは、店主の機嫌による。

ここまで考えただけで、もう画が見える。全身黒の20人が、丼と店主の顔を交互に見ている。隣の客が食べ終わる。向かいの客も箸を置く。自分の丼には、まだ麺がある。

この店では、麺が残っているというだけで事件になる。

そして、この店には「叩き出され隊」と呼ばれる連中がいる。

店主に構ってもらいたい客である。

他の客が無事に食べ終えようとしている横で、こいつらは叩き出される機会をうかがっている。同じ黒Tシャツを着て、同じラーメンを食べながら、まったく違うことを考えている。

店主の機嫌がいい日は、困る。

多少食べるのが遅くても、何も言われない。全員が無事に食べ終わり、普通に店を出る。いい食事だったはずなのに、叩き出され隊だけは、どこか物足りない。

逆に、店主の「帰れ」が飛んだ瞬間、ほかの19人が身を固くする中で、言われた本人だけが嬉しくなってしまう。

店主は腹を立てている。客は喜んでいる。

客の要望は一切認めない店なのに、叩き出すことによって、一部の客の要望を完璧にかなえてしまっている。

この関係を、ずっと観ていたい。

服装も、メニューも、食べる時間も揃えた。それでも、人間の楽しみ方までは揃わない。店主がどれだけ厳しく仕切っても、その厳しさを楽しむ連中が現れる。

店の決まりを一つ考えるたびに、その決まりの中で妙な楽しみを見つける客が浮かんでくる。店の設定を考えていたはずが、いつの間にか、そこへ通う連中のことを考えている。

この世界を、本気で映像にするつもりでいる。

黒Tシャツ、黒いパンツ、20席、20杯。そして、叩き出されるのを待っている客。

絶対に観たい。

ご期待ください。